『イラクの中心で、バカとさけぶ』橋田信介

戦場カメラマン橋田信介イラク戦記を読んだ。書名は『世界の中心で、愛をさけぶ』という訳の分からないwタイトルの小説のもじりでしょうね。『イラクの中心で、バカとさけぶ』はよく分かります。

 平和な日本では、自分は確かに生きているのだと実感することはむずかしい。なんの変哲もない日常生活に埋没して、それが確認できないからだ。
 でも、戦場は違う。イヤというほど死ぬ目にあう。その極限状態が、逆に生きている実感を与えてくれる。
 一酸化中毒で自殺する若者よ、「青年よ大志を抱いて戦場に行こう」。

橋田さんは戦場に魅せられている。こういう人は日常の刺激ではものたりなくなるのだろう。僕も刺激的なことは好きだけど、戦場はいやだなぁw。死にたくないし。怖いし。でもたぶん戦場には究極の刺激があるのでしょうね。死と隣り合わせの生きているという実感は強烈なものがあるのだろう。

戦場を経験とカンをたよりにつき進む様子はスリリングです。でも常人には理解できない頭のネジが一本抜けてるようなユーモラスな感じが全編に漂っている。決定的な場面にはサイコロが出てくるw。最後は天にまかせてる感じがする。そうじゃないとこういう仕事はやってられないんでしょうね。

いっけんただの戦争好きじゃないのかとも思えるのですが、戦争の不条理さをいちばん現場で感じてるんじゃないでしょうかね。だからこそ撮りたい、伝えたい、現場に行きたいと思うのではないでしょうか。

橋田さんがイラクで襲われて、亡くなられる前に、「朝まで生テレビ」に出ているのを観た。イラクで拘束された若者が馬鹿だのなんだのと批判されている中で、若者を擁護していた。大きな声と身振りで穏やかにものを言う姿がすごく印象に残っている。


イラクの中心で、バカとさけぶ―戦場カメラマンが書いた


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「橋田信介おもしろエッセイ集」